このレビューはネタバレを含みます
よかった。心に残るセリフが色々あるが、それはまず冒頭の「でも母さんも色々大変だったんだ」というセリフに始まる。辛い環境の中で親に対する不満ではなく親に寄り添う形で気持ちをまず表明するというのがパンチがあったのと、アダムが親に抱く感情に共感を覚えた。
物語の冒頭はアダムの置かれてる状況の説明なんだけどそれも簡潔で要領よく伝えていてよかった。
途中の「世間はガン患者には同情的だが統合失調症患者には見て見ぬふりをする」みたいなアダムの訴えに感動した。
起
父親に捨てられた可哀想な母親が自分の料理で喜んでくれる、そんな所から料理という自分自身のアイデンティティを育んでいくアダム。しかしあるとき母親には恋人ができて、自分が幸せにするはずだった母親を赤の他人に奪われてしまったように感じたアダムは孤独を感じる。孤独なアダムを支えていたのは料理人になるという夢だけだった。
元々幻聴・幻覚の症状を抱えていたアダムだが、ある日学校の理科の授業でひどい幻覚に襲われパニックになり友人に怪我を負わせてしまう。
承
アダムに下った診断は統合失調症だった。母親はアダムの症状を改善させるために献身的だが、アダムはクラスメイトにからかわれ学校も退学になってしまう。ある日母親が見つけた治験薬をアダムは試してみることになり、新しい学校も見つかった。薬と成績の維持を条件にアダムは転入を許され、そこである女の子と親しくなる。薬の効果なのか彼女と過ごす間に得た安らぎのおかげか、アダムの幻覚症状は改善していく。しかしある時アダムは自分の味覚が狂ってることに気づく。それは薬の副作用だったのだが、それまで副作用をあまり気にしてなかったアダムは始めて不安を覚える。1番恐れたのは脱糞だ。アダムは薬の服用をやめる。断薬してしばらくするとまた幻覚が見え始めたアダム。そのせいで彼女との関係も悪化し、さらに追い打ちをかけるように母親に妊娠の報告をされる。元々父親が家を出ていったのも自分の存在のせいだと感じていたアダムは、母親の妊娠で自分が完全にいらない存在に思えてしまう。さらに母親の再婚相手ポールへの憎しみが募る。
転
断薬が母親と学校にバレ停学処分になったアダム。幻覚症状が極限に達する中、彼女とプロムで踊りたいアダムは薬をODし停学処分にも関わらずプロムに参加する。プロム会場でアダムはまたパニック状態に陥り高い場所から転落し病院送りになる。学校は退学に。愛してくれる母親の愛を信じられず、彼女には自分の病気のことがバレ、苦悩していたアダムを救ったのは母親の再婚相手のポールのとあるメールだった。自分のことを忌み嫌っていたと思っていたポールが、実はそうではなく学校でアダムが退学にならないよう取り計らってくれていたのだ。その事実を知ったアダムは母親とポールの支えや愛情を信じることが出来、精神病棟からの退院を望むのだった。
結
アダムが唯一心を開いていた牧師の言葉も手伝い、自分の心の歪みを認めることが出来たアダムは、学校の卒業式、壇上に上がりそれまでひた隠しにしていた自身の病気や思いをみんなに告白する。卒業式のあと、彼女はそんなアダムに愛していると言った。学校も体裁を気にしてアダムの卒業を認めてくれて、アダムは家族の支えを受け入れながら調理師学校に通い始めるのだった。