May

ノマドランドのMayのネタバレレビュー・内容・結末

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

広大な草原での野糞シーンからのタイトル出し、そしてAmazonの工場という冒頭に、既に心を掴まれた。
マクドーマンドの繊細な感情表現のバックにある美しく力強い自然。作中のほとんどに都市のシーンがなく、国立公園や大地ばかりで素晴らしい映像体験だった。
そしてこの作品は、劇場でも旅をしたように思えたという枠ではもちろん収まらず、Amazonの食堂シーンでのタトゥーの説明の際にチラッと出てきた、心の家という言葉がじわじわと効いてくる。

作中にでてくるノマドたちは、自らの余命や過去への後悔、恋人のこと、亡くなった夫など様々な事柄を心に抱えている。定住するのではなく、放浪をするという行為は、この心の中にある、まさにノマドしている個人的な何かを、どう自分の中に住まわせたらいいか分からないために奔走している結果のように思えた。
ヴァンに乗っていろんな場所に行って、いろんな人に出会う、「さよなら」ではなく「またどこかで」と言える関係性がこの問題をひとつ前に進めてくれる。マクドーマンド演じるファーンが1人になろうとしても何かしら誰かが声をかけてくれる、ずっとファーンを孤独にさせないシーンが目立っていたためにそれを強く感じた。

他にも、来年もここで働いてというお金を稼ぐ場所はある程度決まっていて、それがルーティンワークになっている(働くことはそこまでノマド的ではない)のは、この資本主義社会において妙にリアルだった点もよかった。
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