Shizka

ノマドランドのShizkaのネタバレレビュー・内容・結末

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ノマドは自由、拝金主義は悪、仕事で身体を壊して何になる、と冒頭でノマドを賞賛しておきながら、この映画からはノマドの侘しさ、厳しさだけが伝わってくる。

負の面をかなりクローズアップしている。ほとんど夏の描写がなく、悲哀の音楽とともに寒々しい大地、その中に1人だけ、ただいる、そんなカットが多かった。

もちろん滝に飛び込んだり、自然の中を歩いたり、この生活によって得られる楽しいこともあったけれど、やはりどこか、これはダメな人たち、不適合な人たち、普通にできない人たち、という色眼鏡で見られたノマド映画だった。

もし同じことを10代20代の人たちがやっていたら、こうまでひもじい映画にはならなかった。それほど彼女は厳しさと戦っていたのだ。どうにかしなくてはならない、そんな意思があった。

そう、考えてみれば、彼女はこの映画の中で何度笑っただろうか? 笑うことが全てではないだろうけれど、笑いのあるデイヴの生活の方がより良くみえてしまう。

一方の彼女の生活はサバイバルしている。未来や将来を見ることなく、ただ明日も同じことをしている、そんなふうにみえた。

ノマドは社会の型枠を嫌い、月並みな日常を嫌ってノマドになるのだろうけれど、あの生活で満足している人は、誰一人いなかった。

じつはバックパッカーをしていたことがあって、こういう生活をしていたこともあったけれど、あの時はもっと仕事が少なく、遊びが多かった。確かにひもじい思いもしたけれど、笑いがあった。

この映画はそうではない。歳をとってからの現実をまざまざと見せつけてくる。

1人はダメ、定住しないのはダメ、家族がいないのはダメ、こうなってしまうんだぞ、と言っているようで、とても最後のsee you in a roadに共感できるものではなかった。

あまりに現実すぎて、いやらしい。
Shizka

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