これってキアロスタミの『桜桃の味』だよね。『ザ・ライダー』で見せた一義的シークエンスの連続は関係性における視野が広くなっているためにかなり解消されている。『兄が教えてくれた歌』『ザ・ライダー』本作と人生における地点の変化を順繰りに見せているのはジュリアデュクルノーにおける『Junior』『RAW』『Titan』のようで、両者がアカデミー、カンヌでそれぞれ同年に最高賞を受賞しているのも面白い。アイデンティティと自他における受容を一貫して追い続けているデュクルノーとは違い、ジャオは完全に観察に主眼を置いている分、本作の方向性は少しブレてきている。ただ必要な視点ではあるため、演じることに重きを置いてしまった本作の虚構性は非常に勿体ないと感じた。
