雄大な自然とノスタルジックな色彩に対して、美しさより、鬱屈とした心苦しさを強く感じた。そしてそれは終始晴れきることはなく、どちらかといえば得意ではない、わたしにはとても窮屈に感じる作品だった。
喜劇的でも、悲劇的でもない。人生、そう、だからこう感じるのもまた当然かもなあと思う。
主人公の生きにくさ("不器用さ"と言うべきなのだろうが、)を描くのが絶妙。
一生の居場所を失ったとしても、それでも生きていかねばならない彼女が自ら選んだ持たざる者の道というのは、場所や人に囚われないことで、自由やしがらみから解放される生活であろうが、孤独や不安とは常に隣り合わせで、その日その日を懸命に乗り越える生活。
それでも、往く先々で出会う人たちとの交流から得られる僅かな希望の欠片を丁寧に拾い上げる彼女のまっすぐな逞しさには敬服する。受け入れることは、とても労力の要ることだから。
「この生き方が好きなのは、最後の"さよなら"がないんだ。いつも"また どこかで"。実際そうなる。また会える。だから私は信じていられる。」
この学びを得た彼女は、これからもノマドとして暮らしていくことを、自らの意思で選び続けるのだろう。
「残したいものは?」
『ないわ 何一つ』『もう必要ない』