うみぼうず

親愛なる同志たちへのうみぼうずのレビュー・感想・評価

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)
3.0
この映画をロシア人映画監督が製作したということが一番の価値なのかなぁと思う。

スターリン個人のカリスマ性により統治あるいは隠蔽できていた、盲信させられていた共産主義の負の側面。批判することでスターリンとの決別は必須だったのだろうし、それによって生じる社会の変化も必然の流れであった。
「スターリンが恋しい」というセリフが何度か登場するが、現在よりも良かった(と思っている)気持ちは理解できる。ある種の懐古主義と血の入れ替えはどの時代にもどの組織にも訪れる。

ちょうど直近の日本でのジャニー喜多川氏の問題とそれを取り巻く企業の問題と重なる部分が多いなと。亡くなる前の当時の繁栄を享受しておきながら、故人に責任を押し付ける手法は、政治的に理解はできるが好きではない。

映画内当時の共産主義は武力と権力を掲げていて、粛清と闘争の歴史でもある。今まで信じてきた(信じざるを得なかった)共産主義を信じ続けていいのか。信じることで今後良くなるのか。そうした根底を揺さぶるということがテーマなのかなぁと思う。
ただなんとなく伝えたいものが多すぎてブレていたかなぁと感じる。

2020年に製作されていて、冒頭にも言ったけどロシア人がこのテーマを取り上げることには価値はあると思う。当時を批判しながら、共産主義そのものを批判していそうなので、現代ロシアで公開された事は少し驚きかなぁ。今も続くウクライナ戦争と合わせて、ロシア人はどう思うんだろうか。

白黒にする意味はあまり感じられなかった。画面は少しありがちな構成だったり、また逆にありえない撃たれ方して不謹慎ながら笑ってしまったりとちょっと微妙に感じてしまったかな。
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