真魚八重子

ニューオーダーの真魚八重子のネタバレレビュー・内容・結末

ニューオーダー(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

なんの資料も見もせずに試写を鑑賞し始めて、後半で(ミシェル・フランコの『父の秘密』みたいな雰囲気だなー)と思っていたら、本当に監督がミシェル・フランコでビックリした。厭映画のマエストロであり偏執狂。フィルモグラフィーでは途中『或る終焉』とかイマイチだったけど、これは最高に後味が悪くて素晴らしい。

格差闘争が緑色の液体の影響によってか、唐突に発生する。説明はない。あいりん地区で突然みんなが石を投げだす暴動のようなものなので、理由はいらないだろう。

ポン・ジュノ『パラサイト』のように観念的ではなく、貧乏人はただ野蛮であり、金持ちは利己的。格差闘争によって転覆しても、貧しさが原因で教養や知恵がない人間たちに社会は仕切れないので、ただ生活が悪くなる一方。

良い人間は一握りしかいないし、そんな人々はむしろ踏みつけにされる。わたしの大好きな厭映画『シージャック』の誘拐方法がここでも。人間の極限的な残酷さがなせる犯罪。

不条理や、人間の真の悪質さを描いた映画として、現代版『皆殺しの天使』であり、自己中心的な金持ちが結局覇権を持つ諦観に満ちた『日本の夜と霧』のよう。
真魚八重子

真魚八重子