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ニューオーダーのRenのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
2.5
確かに不条理で胸糞で、ずんと沈んだ気分にはなるのかもしれないけど、それだけだった。もっと核心を突き刺して離さない痛烈なメッセージやショッキングなものが観られると期待した自分が悪いのか。

今作が提示したいであろう「富裕層と貧困層の分断」「秩序の崩壊から来る社会の崩壊は現代社会と地続きの問題であり、いつか現実もこうなるかもしれない」という批評性まで潜れない。

リアルを徹底したいのも分かる。メキシコの国旗に準えたドレスの赤と暴徒の緑のインクが国家内争を表しているのも分かる。
ただもっと社会派として強度高くするならもっとバックボーンだったり、国家へのマクロな視点を入れても良かったのではと感じてしまった。
でなければ、もっと映画でしか観られないようなグロその他ショッキングな表現を観たかった。

日常が革命という名の脅威に瞬く間に侵され、阿鼻叫喚の地獄絵図に変貌する様を淡々と切り取る感じは、テーマこそ違えど『ウトヤ島、7月22日』を思い出した。登場人物に優劣が無い点も似ている。そこにいるのは視点人物(巻き込まれ型・所謂主人公ムーブをしない)のみで、いつ誰が殺されるのかわからないスリルが持続する。
貧富の分断をバイオレンスで炙り出すのは『ザ・ハント』にも通ずるけど、あちらは明確に『バトル・ロワイヤル』的フィクションだったのでまだ一層目の楽しみがあった。

序盤の結婚式の場面。妻の手術費を工面すべく縋る元使用人の老人と、彼をたらい回しにする新婦一家が社会構造そのものの縮図になっているのは上手い。縁があるのだから助けてくれてもと懇願する側も、結婚式の晴れ舞台だから今ある金だけ渡して早く引き取ってもらおうとする側も、悪いと断言はできない。国、ひいては金のある側に頼るしか無い貧困層とそれを解決したりしなかったりしてきた国。そうやってじわじわ生み出されてきた摩擦はいずれ爆発するだろう、という話だ。

ラスト、風にはためくメキシコの国旗。反転した旗は、「革命」によって国家の在り方がここから新たに変わっていくことを表しているのだろう。
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