暴力シーンが多めながら淡々とした展開で社会派なメッセージを持つ作風は良かった。
富裕層への不満を肥大化させた人々が武力行使で暴動を起こし、混沌を社会にもたらすという一連の流れはフィクションでも何でもなく、現実の社会に起こり得る可能性が十分にあることで、そのリアリティが現実の問題として考えさせる。
富裕層が富裕層でいられるのは富の土台にいる貧困層の存在があるからであり、その土台が揺らいだ時富のピラミッドは崩壊する。両者の存在によって成り立つ社会であるにも関わらず、上に立つ者が下の者を見下し、軽んじ続けた結果がもたらすのがあの混沌。
武力による家動の発生に呼応するように1人また1人と家動に加わり、1人では決してできない非道な行為に走らせてしまうこと、一度非道な行為に走ってしまえば、本来持っているはずの人間性を失いこれまでなら批判したような人間にさえなってしまうというのを見せられた。
事態が良好な方向に向かって終わりというわけではなく、単にマリアン周りの一連の事件が終結して終わりという終わり方には、築くのは難しい秩序が崩壊するのは一瞬ということを感じさせ、混沌が蔓延すること、特定の誰かの力ではどうにもならない事態にいるということに堪らなくディストピアを感じる。