菩薩

空に住むの菩薩のレビュー・感想・評価

空に住む(2020年製作の映画)
3.9
むしろこれ原作『寝ても覚めても』では?なんて思う既視感がところどころに。ここでも愛猫は彼女にとっての誠実さを意味し、その消失と共に防波堤を失った現実感無き日々の中に「生きる(ダルい)」とその覚悟が雪崩れ混んでくる。徹底して積み重ねられていく対称・対比による二項対立の提示、高層タワーマンションの住居と平家造の職場、卵の白身と黄身、丸みを帯びたワイングラスと垂直に伸びるシャンパングラス、連載か書き下ろしか、編集長と社長、月と火星、料理上手の多部ちゃんとまるで出来ないミムラ、FENDIの69状態のロゴなどなど、って事はこの作品の中で3回ほど「めちゃくちゃSEXする」多部ちゃんは…。多部ちゃんの抑制の効いた演技に対してミムラは常にテンション全上げの躁状態、そんな彼女のインスタのアカウント名が「ASKO」であるのもちと意味深(役名が明日子だからなんだけど朝子とも読める)だし、黒猫防波堤消失により彼女の住居に侵入する目的を失った彼女は外敵へと変化していく。両親を同時に失った多部ちゃんと「出来ちゃった結婚」の岸井ゆきの、彼女の破水以降のくだりがめちゃくちゃサイコパスなのだが、永瀬正敏が言う「平行線もやがては交わう事になる」が最も顕著に現れているのはこのシーンなのだろう、知らんけど。岩ちゃんさんはずっと「お前らこう言うの観たいんだろう?」な演技をさせられているし、EDテーマに3代目ぴんから兄弟?みたいな人達の「愛してる〜」みたいな曲が流れて笑うが、青山真治はどこまでも青山真治だし、めちゃくちゃいいスポンサーGETしたぜ!くらいにしか思ってなさそう。しっかり分別されるゴミ→猫が死ぬ時は全部一緒くたに、多部ちゃんの口から飛び出す「『ボディ・スナッチャー』みたいだね」、株式会社ダブルのカレンダー、エロ過ぎる夕日のピンクにさくらんぼ!終盤がふんわりしてしまうのがちと玉に瑕だが、掘れば掘るだけ光るものが出て来そう。って事で後は皆様にお任せします…面白い!
菩薩

菩薩