ろく

木曜組曲のろくのレビュー・感想・評価

木曜組曲(2001年製作の映画)
4.0
密室劇の愉悦⑤(ラスト!)

恩田陸と言うのは不思議な作家である。ミステリ作家でありながらどこか「謎」の緻密性に関し我関せずのところがあるんだ。だからか純粋にミステリを読むというと恩田の作品は外れてしまうけど「小説を読む」というとこれでもありなのかなと思って読んでしまう。「六番目の小夜子」や「球形の季節」など確かに傑作なんだけどミステリとしては座りが悪い。これでもいいのかって思って読んでいるときがある。

それはこの作品もそうなんだ。確かに人は死ぬし、その解決はここで描かれる。でもどうも牽強付会な時があって何か座りが悪い。その「居心地の悪さ」がこの作品にも見てとれるんだ。

旬の女優が勢揃いする。鈴木京香、原田美枝子、西田尚美に富田靖子。さらには加藤登紀子に浅丘ルリ子。そう、どの女優も座りは悪い(それは悪い意味ではない)。そしてその座りの悪さこそこの作品の見所なのではないかと思いあっと息を呑む。そしてこの映画の主人公が実は○○であることにさらに息を呑む。まさか。まさかね。そうなのか。見ていてぐるぐるしてしまう。ああ僕の思っていたのは何なのかって。安穏な椅子はガラガラと崩れそこには何か不安を抱かせる「座りの悪さ」が残るんだ。

ツッコミどころは多いはずだ。それでも剛腕にまとめられてしまった。その腕力に開いた口が塞がらなくなる。なんだ、○○。お前が全て持っていくのかってね。そう、この映画はその点で(主役が誰かわからないという一点において)しっかりと「ミステリ」なのである。

※食事のシーンがなんとも優雅な作品である。人が死んでなければそのまま良くある幸せ映画なのではないかと感じて観ていた。日常で殻つきの牡蠣が出る家はそうない。

※これで密室劇シリーズはおしまい。正直最後は「12人の怒れる男」にしたかったが(大好き)、アマプラで配信終わってしまったので泣く泣く断念。また次の機会にでも。
ろく

ろく