かすとり体力

ザ・フラッシュのかすとり体力のレビュー・感想・評価

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)
3.8
新時代のヒーロー映画としてめちゃくちゃよく出来ていて、しっかり面白くはあった。
(という、奥歯にものが挟まったような言い方になる理由は後述・・・)

良かった点。
個人的な嗜好としてヒーローの能力が単純であるほうが好みで(ハルクの怪力とか)、「ものすご速く動ける」という能力が純粋に好き過ぎる。

その能力がヒーローとしてどう活きるかを軽やかに見せてくれる冒頭の赤ん坊救出シークエンスなども純粋にテンション上がるし、「速く動ける⇒光速を超える⇒時間を遡れる」というロジックを編み出したのは、特に昨今のマルチバース化が進むヒーロー映画においては偉業でしょう。

私、DC映画をそれほど観てきていないので、DCユニバースのファンムービー的な楽しみ方はあまり出来なかったんだけど、好きな方かたからしたら垂涎の展開だろうなといったシーンも多く、とにかく鑑賞者を楽しませようとする心持ちに漲っていたし、ちゃんとそれがうまく行っていたと思う。
(だからこその世間的な高評価なんだろうと思っている)

ということで、本作自体に文句はないんだけれど。

なんつーんでしょう、マーベル作品とかも全作観たり、その他のヒーロー映画も最近ではちょくちょく観ていて、ヒーロー映画のあらゆるパターンを観てしまっているせいか、そもそも「ヒーロー映画」という時点でどれだけ面白くても想定の範囲を超えないみたいな心持ちになっているところがあるな、と本作を観て気づいた次第。

簡単に言うと、(特に昨今のマルチバース化された)ヒーロー映画に食傷気味、ということです。

マルチバース化の理屈についても、作品によって質の高低含め色々あれど、それをうまく脚本に落とし込めば落とし込むほど、「良く出来ているな」と思うよりもむしろ「うまく整った言い訳を聞かされている」みたいな感じなっちゃうのよね。

もう、他作品とのクロスオーバー感がない、かつ、クセの強いタイプのヒーローものとかでないとなかなか興奮出来ないのかもしれません。
(そういう意味で、今年初めて見た『シャザム』の1作目とか良かったんだよね・・・)

ということで、本作にはなんの瑕疵もないのにネガティブなコメントを吐いてすいませんでした。

最後に一点、本作の「時間軸改変」への折り合いのつけ方は非常に美しかったと思うんだけど、これ観て改めて思ったのが、もう昨今の倫理観では時間改変によって今の自分に利益をもたらす、みたいな作劇って無理よな。

ここら辺の基準値をぶっ壊すようなタイムパラドックスものが出てこないと、今後この手のジャンルもかなり息苦しい世界に突入しちゃうような気がしたりもしました。
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