メランクさん

ベイビー・ブローカーのメランクさんのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
5.0
「真実」も「万引き家族」も嫌いなわけではないけれど、
なんとなく昔ほどは惹かれなくなってきてる是枝監督だったけれど、
今作はがんがん泣かされました。
(ま、上記2作もたぶん泣いたけどね)

「捨てんなら産むなや」
という強烈な一言から追跡をはじめるペドゥナさんが、
ブローカーを釣るために仕組んだ盗聴により、
最終的には捨てた殺人者に寄り添うことに。
この構造は「善き人のためのソナタ」を想起した。

結局のところ一緒にいる時間が愛着を生み、
全くの他人同士が擬似家族を形成していく。
親子、恵まれない出産をめぐる議論はさまざまで、
同じワゴンに乗る彼らでも考え方はぜんぜん違う。
追いかける刑事2人にしてももちろん違う。
でもその人を知り、触れ合う時間が長くなれば、
それぞれの事情もわかるし、認めたくなる。

その、お互いに理解しあっていく過程が
作品を通して納得できるということこそ、
気づきのきっかけになるんじゃと感じる。

洗車のシーン、観覧車の目隠し、
そしてホテルでの最後の夜。

あー本当に見てよかったと感じる瞬間がたくさん。

万引き家族に続いて擬似家族ものであり、
ロードムービーになっているのが面白い。