おでこが髪で隠れたキャスリン・ニュートンが、無声映画のスタアを思わせる可憐さで、陰ひなたに咲く花といった趣がある。ここの暗さ(文字通り顔に光が全然当たらない)があるからこそ、入れ替わり後の展開を期待するし、赤い革ジャン着て登校するシーンではたいへん高揚させられる。
ただ、この(ヴィンス・ヴォーンと)入れ替わっているキャスリン・ニュートンが、意外にもあんまり弾けない。いや、このあたりの塩梅は作者たちのすぐれたバランス感覚(「入れ替わりが戻った後にも事態がほどほどで収まる程度の凶行」という……)なのだとは思うのだが、もっとガンガン殺して良いとも思うのである。『悪の教典』くらいやっちゃっていいんじゃないかしら。さすがに無責任すぎるか。
(キャスリン・ニュートンと入れ替わった)ヴィンス・ヴォーンの描写も、おしっこするシーンは若干面白いけど、さほど印象に残らない。とはいえ何気なく張った伏線を粋に(「時計」のくだりは失望、「balls」のくだりはナイス)回収して、見て楽しかったなあと思えるような一篇に仕上げてしまうあたり、クリストファー・ランドンという人はやっぱり良心的な、悪くない作家だなと思った。