MasaichiYaguchi

クローゼットのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

クローゼット(2020年製作の映画)
3.7
Twitter、Facebook、Instagram等、現代はこれらのSNSで何時でも何処でも自分の心情を吐露出来るように思えるが、どれだけの人が本音を言っているのだろうか、特に弱音を吐くようなことは稀な気がする。
交通事故で男性機能が不能になり、セックスすることも子どもを作ることが出来なくなった主人公・ジン(神野佑)が失意の先に辿り着いた「添い寝屋」稼業、この仕事を通して様々な人々と出会い、触れ合う中で少しずつ彼の中で変化が起きていく。
この作品に登場する人々、主人公のジンをはじめ、彼の顧客たち、麻生七海、西野香織、下田譲、山村ミエは皆、孤独で、何かしら問題を抱えていて「SOS」を発しているが、そういった弱音を吐ける存在であるジンでさえ、最初から心を開かない。
タイトルの「クローゼット」は人が本音や弱音を仕舞っている心を意味している。
本作は事故によって人生の方向を見失ったジンが、添い寝を通して様々な人々と触れ合い、やがてその人の「クローゼット」を開けて中を垣間見ることによって自分を取り戻していく姿を繊細にエモーショナルに描いていく。
終盤のドラマチックな展開の後にあるラストは、「クローゼット」を開け放った先にある何かを我々観客に期待させてくれる。