[ペンは剣よりも強いけど、勝てないときは…]　0点

無実の罪で刑務所に送られた画家の夫を追って辺境の地にやって来たアントニーナ。美術教師として就職した地元の学校では、生徒たちが地元で最凶の暴力漢の弟に怯えている状態で、彼女は彼ちと芸術を通して交流を図ることで、彼らの意識を改革しようと試みる。不良生徒による暴力を見て見ぬ振りし、問題を起こさないようにすることで偽りの平和を享受している姿を現代ロシアと結びつけるとこまでは上手くいっていたが、幻滅した先輩教師や暴力を振るわれる生徒たち、絵画に秀でたいじめられっ子などありきたりな描写を雑に並べるに終始した上で中途半端に終わるので、これならやらない方がマシである。題名も"ペンは剣よりも強し"という意味を含んでるんだろうけど、結局実力行使しちゃうヌルさに信念の浅さが見えてくる。結局のところ、都会人が遅れてる田舎にやって来て、自分が住みよい村にしようとしたけど失敗し、その必要もなくなったので多少の未練もありつつ帰りますという都会人の自慰映画だった。というか、そもそも絵画そのものもがほとんど絡んでこない時点で終わりだろ。この映画の独善的なヒロイズムに酔いしれるようなラストは今年で一番嫌い。

とはいえ、この映画で許されちゃうとこに現代ロシアの病的な部分も朧気に見えてくるのが怖いところ。ロシアの田舎に行く最近の映画で傑作なのはDarya Zhuk『Crystal Swan』とセルゲイ・ロズニツァ『A Gentle Creature』ですよ。前者はベラルーシなので厳密には違うけど。

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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020

絵に描いたように美しいロシアの田舎の風景とともに、独裁政権のもと諦め切っている従順な人々。もしかして日本も外からはこんなふうに見えるのかも。主人公に関わる男2人、強引な態度でその実もろかったのが示唆的だ。

見てみぬふりをする、疑問に思わない、疑問が湧いても深く考えることをしない、いま目の前で手の届く範囲だけをやり過ごそうとする。もう、日本の合わせ鏡だなあ。