シミステツ

シカゴ7裁判のシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ベトナム戦争に反対する市民や活動家たちが抗議デモに集まり、非暴力を貫くつもりだったものの警察と激しく衝突。暴動を煽ったとして7人の男が起訴され、裁判が幕を開けるというストーリー。

裁判が幕を開けるのが早かったので、前段の陰謀的な部分、双方からもう少し描いてもよかったと思った。

シカゴ・セブンはそれぞれに思想も目的も違う中で一括りにするという「暴力」、都合よく被告に仕立て上げられた黒人、反対尋問の証言を削除させたり、不都合な陪審員は任を解くなど政府側に都合よく進行していく。ボビー・シールを退廷させ縛り猿ぐつわをかますなどその暴君とも言えるやり口に戸惑い反抗する被告原告双方。

被告弁護団は新たな証人として、シカゴ暴動において起訴を求めないことでジョンソン大統領から解任されたラムゼン・クラーク前司法長官に会いにいく。核心に迫っていくがクラークは退廷を命じられる。

「血が流れるなら街中で血を流させろ」
テープに残るトム・ヘイデンの言葉。非暴力だっまはずのデモはトム・ヘイデンが暴動を煽っていたことが取り沙汰される。被告側は窮地に立つような展開。真意は「”僕らの”血が流れるなら」。「警察の横暴をみんな見ろ」ということ。文脈を無視すれば言葉は好きに解釈できる。「私は男を父と敵対させに来た娘を母と敵対させに」というキリストのマタイ伝10章35節を引用して言う。34節と36節を読まないと真の意味は分からないと。言葉の持つ多面性がラストに展開していく。

最後陳述を許されたトムはベトナム戦争で亡くなった米兵5000人の名前を読み上げていく。最高のカタルシス。感動した。トムはその後米国州議員になるんだね。

序盤に判事の名前間違いが多く、シリアスな中にも馬鹿げた裁判だという滑稽さをメッセージとして添えているし、これがラストに効いてくるというのが細かい演出で光る。テンポも良く展開もおもしろかった。

「お前は有能だ。だが所有代名詞はちゃんと使え」