スズランテープ

サマーフィルムにのってのスズランテープのレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
4.5
めちゃくちゃ好きな作品。
今作はシンプルに素敵で風変わりな青春映画としても楽しめるのだが描いているテーマが個人的にぶっ刺さった。

多くの人は今作において映画愛という点や、どんな映画も許容した懐の大きい点を高評価している人が多かった。僕は実を言うと映画愛を描いた映画はそこまで好きではない。それプラスα何かないと個人的には大した作品にはならないと思う。

今作のよかったところは現在の異常な時間の流れの速さを描いていたところである。昨今の社会はとにかく時間が流れるのが早い。消費社会はますます加速し、最先端、最新は一瞬で過去のものとなり流行もすぐに廃れる。そこでいかにして文化を保全し、美しい思い出と感情を守るのか。そこの描かれ方が好きだった。しかもその文化というものが伝統工芸のような大層なものではなくクレープや映画などより一般的なものを例に出したのが素晴らしいと思った。

全てのカルチャーを守るために手を取り合うというメッセージ性、それを好きな人が声をあげ共存して如何に暴力的な時間の流れに立ち向かっていくか。まさに現代社会にぴったりな問題提起であり一種の警告にも感じられた。


あとこの映画が刺さった人は是非ともCreepy Nuts の『かいこ』という素晴らしい楽曲を聴いてほしい。これを聴いてやっとこの映画の感想がまとまった。













ネタバレ注意⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️
正直。『映画がなくなる』という設定の映画が大々的に出てくることは結構真面目に向き合うべきことだと思う。日々体感しているが人間の消費生活における満足の時間がどんどん減ってきていると思う。物を手に入れても飽きるのが早い。どんどん楽な方向にいく。それがあまりにも自然すぎて危機感を感じる暇すらない。このままだと今当たり前にある大好きなものがどんどんなくなっていく。これは考えてみれば当たり前だったのかもしれないが全く意識したことはなかった。この映画はそんなことを可視化できる形で提示したことに意味があると思う。
スズランテープ

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