たかちゃん

昨日より赤く明日より⻘く-CINEMA FIGHTERS project-のたかちゃんのレビュー・感想・評価

3.9
作詞家・小竹正人の詞をもとに、6人の監督が6つの物語を脚本・映像化した作品。短編という基本的作法を無視した作品もあれば、まとまりの良い作品もある。小竹の詞という共通点以外は何らつながりのない6つの物語。
『BLUE BIRD』(SABU)は、仲良し兄弟の弟が倒れ、頭部切開手術を受ける。顔面包帯だらけの弟を病院から連れ出し、また一緒に遊ぼうとする兄。ところがやくざの抗争に巻き込まれてしまう。そして弟は…。
6本の中で最もブラックユーモアに富んでおり、オチは最も悲しい。冒頭、兄弟が遊ぶ日常描写が非生産的で共感できないものの、SABUの映画作家としての刻印は確認できる。
『言えない二人』(山下敦弘)は、脚本・向井康介という黄金コンビだが、話(詞)自体が凡庸だし、ユーモアも封印しているが、山下らしく誠実で正攻法にまとめている。
友人から頼まれ、女の子に「彼は別れたがっている」と言わなければならないが、切り出せないまま終電の時刻が近づく。『花束のような恋をした』みたいで損している。
『水のない海』(久保茂昭)は料理の宅配サービスの青年が訪れた一室では、ゲス男と中国人の女の子の言い争い。男が出て行き、部屋に招かれた青年は、目にした絵画に魅きつけられる。『小説の神様 君としか描けない物語』の久保にしては(失礼)意外に面白い。青年を人見知りの設定にしたのが良い。人工知能音声アシストはあまり効果を上げていない。
『怪談満月蛤坂』(森義隆)は、200年前に死んだ料亭の仲居と一夜をともにした料理人の怪談。発想が巧く映像表現に結びついていないのが惜しい。
『COYOTE』(真利子哲也)は個人的には最も観たかった作品。シカゴから東京へ、新型コロナの中、五輪のチケットを買いに帰国した青年。恋人の劇団公演は中止になり、二人の愛犬はコヨーテに殺される。二人は意識を共有しているようだが、青年は恋人の哀しみと傷心に気づかず、緊急事態宣言下の東京で友人と騒いでいる。バイオレンスは封印。近未来ではなく、我々の置かれている今の状況を捉えた異色作。
『真夜中のひとりたち』(新城毅彦)濃い顔の関口メンディーと、『孤狼の血』の阿部純子の、共に愛する人を失った二人が深夜の東京を彷徨する。孤独な二人は恋に結びつきそうで、心はすれ違う。婚約指輪、結婚式の引き出物といった小道具の効果的使い方が見事。関口メンディーの一見ワイルドな外見なのに内気なキャラという設定も面白い。