ちろる

拝啓天皇陛下様のちろるのレビュー・感想・評価

拝啓天皇陛下様(1963年製作の映画)
4.0
反戦作品でもないし、タイトル通りの天皇万歳な作品でもない。
戦争があった時代をコメディで描いたこんな作品は初めてだ。
渥美清が寅さんで成功する前に、もうすでにこの、このバカで憎めない山田役で、寅さんのキャラクターは完成していたんだ。
戦争は悲惨だけど、それを引きずる片隅の人間たちの貧しさの連鎖はエンドレスで、彼らの末端の生活は気にかけられることもない。

内容はほとんど会話劇で、この山田の暴走っぷりに笑わせてもらえたりして楽しめたんだけど、だからこそラストの展開はなんだか心が追いつけなくて、ラストの画面いっぱいに広がる文章に予定外に泣いてしまった。
邦画らしい穏やかな情景を舞台に喜劇として描きながら、ラストにで思いっきり皮肉に持っていくあたりはなかなかでした。
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