camuson

ラターシャに捧ぐ ~記憶で綴る15年の生涯~のcamusonのレビュー・感想・評価

3.7
1991年。ロサンゼルス郊外サウス・セントラル地区で、15歳の黒人少女が1.75ドルのジュースの万引きを疑われて、代金の2ドルを握ったまま、店主に銃殺された事件がありました。本作は、殺された黒人少女の親友といとこが、彼女との思い出、事件当時の記憶を語る作品です。

映像は、おもに思い出話の情景に合わせたイメージ映像と、実際の地元の風景によって構成されていますが、低所得者層が多く集まる大都市郊外の街の雰囲気が感じられて良かったと思います。

プールで悪ガキにいじめられていたところを少女に助けられたことがきっかけで友達になったと語るときに映る水が抜かれたプールは、日本にありがちな四角い深さ一定のプールではなく、両端から少しずつ深くなる形状の結構立派なプールで、排水のためか中央が急に深くなっているのがちょっと興味深かったです。

プールで遊べるくらいなので、スラム街というわけではないし、そこまで極端な貧困層というわけではないし、普通に学校に通っているし、殺された子は学校でオールAの成績で、将来は弁護士になるのが夢だったと語られます。当時の卒業写真を見る限りは、生徒に白人はいなさそうなので、
地区によって、はっきり分かれてしまっているのでしょうね。

そういう地区の事情が分かっていないものからすると、黒人少女を殺害した女店主として、まずは白人をイメージしてしまいます。調べてみると、実際は韓国からの移民1世なのですよね。

特定の民族を敵対視するものではないという遺族の意向もあって、加害者側の出自が明かされていないわけですが、誤解を招く可能性は大いにあるのかなと思いました。

多民族国家ゆえの社会問題は多々あるのでしょうが、何はともあれ一番の悪は銃社会であることですね。銃社会でさえなければ、起こらない悲劇ですからね。
camuson

camuson