スカイ777

川っぺりムコリッタのスカイ777のネタバレレビュー・内容・結末

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

観る前の先入観は、のんびりした少しメルヘンを加味したありがちモノだったが、全くそうではなかった。最初の5分で、それに気づいた。
生きる事、そして、食べる事とは。その意味を深く考える事なく、それは本当に大切な事なんだと自然と理解できる作品だった。強い押し付けも無く、題材を定義されて考えさせられるというものでも無く。これは監督の力と松山ケンイチさんの素晴らしい演技によるものだと思う。
ストーリーはシンプルで大きな展開がある訳でも無く、ただ松山さん演じる山田が新しい土地での生活に慣れていくというもの。松山さんが冒頭からラストシーンまで出ずっぱりで、鑑賞者は山田になったような目線で作品に入り込める。山田は必要以上は話さず動きも地味で大人しい役柄だか、裏腹にその存在感は絶大だった。それは松山さんの表情やその佇まいが、もう山田でしかなく、山田以上に山田だったからだ。
最後の父の遺骨を砕いている際の告白で、それまで見せてきた山田の全ての感情の動きに合点が行った。これは感慨深かった。
見応えはあったが、ムロツヨシさん、満島ひかりさん、吉岡秀隆さんはもちろん実力のある俳優さん達で、各々の個性を演技に発揮していたが、観終わった後、あまり記憶に残らなかった。松山ケンイチさんは役そのものであって、その俳優の持っている個性を土台にして演じているのとは、演技の根本が異なっているのだから当たり前といえば当たり前かな。
この頃、役としてではなく己の持ち味・個性で演じる俳優陣が多いように思う。作品によってはそれが良かったりもするが、1つの作品では俳優達の演じ方の方向性は統一した方が良いのかもしれない。
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