たむたむ

林檎とポラロイドのたむたむのレビュー・感想・評価

林檎とポラロイド(2020年製作の映画)
3.3
「悲しい記憶だけ失くすことはできませんか」

突然記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界を舞台に、記憶を失ったと思われる男が医師から課せられた治療回復プログラムのミッションをクリアしていくにれ、男が囚われていた耐え難い現実を紐解いていく哲学的ドラマ。

2020年ヴェネツィア映画祭・コンペティション部門の審査委員長を務めていたケイト・ブランシェットが評判を聞きつけ、エグゼクティブ・プロデューサーの任を買って出たという、ギリシャの新鋭=クリストス・ニクによる長編デビュー作。
(邪念が過ぎる名前だなぁ…苦笑)

なるほど…これは評価が難しい(^^;;
実は本作、初見は何度か気絶してしまい殆ど消化できず(汗)翌日イチから見直したので、評価スコアは1回目と2回目の平均としました。
一つだけ言えることは、主人公の男が記憶を失うことになった原因を探る“ミステリーめいた話”ではなく、もっと深い部分に焦点を当てた作品であるということ、かな。

終始淡々とした起伏のない展開。正直、退屈な場面が多いし面白くはありません(笑)ニガテなタイプだったけど、観終わると何だかあっという間に感じる不思議な作品でした。初見だけでなく、見直した時も同じ感覚だったので、恐らく物語としての没入度自体は高かったんじゃないかと。

普通に観ていれば、単に記憶回復プログラムの成果を見守るだけに過ぎない。ただ、その過程で男の言動を追うにつれ、“ある矛盾“に気付き始めます。そして次第に“ある疑惑“が浮かび上がり、迎えるラストの余韻が切なく胸に迫ってくる。。

見方によって、幾通りかの解釈ができると思われる本作。何気ないシーンの中に張り巡らされた伏線を、じっくり考察したい人にオススメ。
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