Carly

皮膚を売った男のCarlyのレビュー・感想・評価

皮膚を売った男(2020年製作の映画)
3.8
昨年のTiffで好評だったのでずっと気になっていた作品を先日オンライン試写会にて。これは凄まじいエネルギーの映画だった。自身からすれば現実離れしているけれど、起こりうる事なのだと思わされる圧倒的な魅力がある。観終わってもまだ息がつけない。
サムは期せずして国外へと追放を余儀なくされ、その後恋人を追うために背中を売る。この"お金"や"生きること"の為ではなく、恋人に会うために(ある意味では)身を売るということに理解が追いつかない。決して否定しているわけではなく、そこまで出来る人間がいるのかという驚嘆に近い感覚だ。彼一人生きることなら脱出した先のレバノンで何かしらの方法はあったはず。けれどそれとは別のより困難な、あり得ないような道を選んだ。彼の渇望の先には彼女の存在だけだったのだろうか。相手は結婚していて、それを知っているのに?その辺りが不思議でとても興味深い。
見せ物にされた彼は母国の人間からすれば落伍者のような存在で、異国の人間にとっては享楽の象徴だったのだろう。嘲笑われ、蔑まれる運命を想像さえしなかったのだろうか。或いはそれを乗り越えてでも彼女を手にしたかったのか。いずれにせよ、その選択における彼の心の在り方が私の思考の範疇を遥かに凌駕していて追い付かない。そこにこの映画の面白さがあるとも思う。
Carly

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