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ウィール・オブ・フェイト~映画『無法松の一生』をめぐる数奇な運命~のyukiのレビュー・感想・評価

5.0
🙇‍♀️レビューはスルーしてください。
でもチャンスがあれば、ドキュメンタリーはぜひごらんください✨



「無法松の一生」本編を観る前に流してくれた意義を痛感。

フィルムは当時、爆弾の材料にもなるニトロセルロース。
「映画にまわすフィルムは1フィートもない」
臨戦体制下の映画界は内務省警保局の検閲で「芸術作品は不急不要品」として多々、却下された。
そんな時代の逆風を擦り抜けて今に残る「無法松の一生」。
国民の戦意高揚としてのプロパガンダでなく、英雄伝でも剣客伝でもない。
無学で無鉄砲で傍迷惑なこともするが、
男気と人情味に溢れる人力車夫の松五郎が映し出される作品だった。

花火・提灯行列・運動会など、
松五郎の脳裏を描出する技法は観てるだけで息が詰まるような緊迫感がある。
46のショットのオーバーラップ(画面を重ねて描く技法)は四重ある箇所も。
「勧進帳」と名付けられた準備表に沿っての撮影は手回しで勘だけが頼り。
光の強度を設定するための露出計もない時代。
『一つ間違えたら全部パーになる。
人間の手でやるからね、並大抵のことじゃない』(宮島氏談)

「モリコーネ」「エンドロールのつづき」「フェイブルマンズ」…
“映画愛”を撮った作品は今年になって、既にいくつか観ているけれどこれはー
自分の身体の中にも魂は宿っていて、今それが激しく揺さぶられている。
そう実感した。
気が付いたらマスクが冷たく濡れている。
熱い涙もたくさん流れると冷えるのか。

内務省とGHQによって二度検閲され、それぞれ約10分カットされた。
本作を撮影したカメラマンの宮川一夫氏は“完全版”は生涯、観ることはなかったと言う。

さあ、そのバンツマ版上映だ。



【自分用メモ_φ(・_・】

◆修復プロジェクト
終戦75周年にあたる今年、映画を所蔵するKADOKAWAと、映画の修復を専門とするアメリカのシネリック社が、京都文化博物館と巨匠マーティン・スコセッシの財団の協力を得て実現した。
修復監修には、カメラマン・宮川一夫氏の助手を30年以上務めた宮島正弘さん(78)と共に、再びスコセッシ監督も関わることとなった。
検閲された計18分間のフィルムは現在も所在不明なため、修復されるのは検閲後の状態の43年版。
作業は3つの国を跨ぐ壮大なものとして実施された。

❄️2023🎦-42
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