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すくってごらんのcompmuaのネタバレレビュー・内容・結末

すくってごらん(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

原作は一巻のみ読んで映画を見てます。ももクロが好きなのでフラットな感想ではないです。


金魚から始まる映像のすべてが美しい。冒頭で吉乃に誘われるように小道を曲がった瞬間に
香芝が金魚の町に迷い込んだように、観客も異空間へ迷い込まされるから、突然歌い出すことにも、ラップのような香芝の心の台詞がスクリーン上に出てきても、いかにもセット然とした銀行内やライブバーも、違和感なく受け入れられる
ただ、途中謎の休憩を挟んだあたりから若干のテンポの悪さも感じた。

吉乃というヒロインの心がなかなか見えずに戸惑った。
ピアノを弾く王寺昇を見つめ涙を流すところまで、彼女が見えなくて、すべてセリフで語られてしまうのが惜しい気がした。
明日香が歌で語ったように歌でも良かったし、一人でピアノを弾くシーンに一瞬だけでも回想シーンがあっても良かったんじゃないかなあと。個人的には。

吉乃が見えないことであの涙が引き立ったと言われるとそうかもしれないけれど。
それなら、涙の後の王寺と吉乃の会話は蛇足だった。あの涙だけで伝わる。
演じる側は掴めなくて苦しんだのでは?と思ってしまった。

香芝は現代の寅さんといった見出しをどこかのレビューで見た記憶があるけど、まさにそれで、香芝自身が救われる話と思いきや、吉乃の心を救いにきた寅さんだったと思った。
吉乃の心を救ったけど振られた香芝はまた違う町で誰かの心を救いに行くんだ、と。
(実際には東京に帰るんだろうけど)
町を去っていく香芝の後ろ姿に寂しさとあたたかさを感じてなぜだか少し泣けてしまった。

ピアノをゼロから習いすべて自分で演奏した夏菜子ちゃんも素晴らしいし、出演者達の歌、特に尾上松也の歌と演技が素晴らしい。
シリアスさとコミカルさのバランスが絶妙で香芝がとても魅力的だった。
音楽も素晴らしいのでサントラを出して欲しいのと、スクリーンを演出に使うような舞台にしても面白いだろうなと見ていて思ったりもした
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