やた

The Most Dangerous Year(原題)のやたのレビュー・感想・評価

The Most Dangerous Year(原題)(2018年製作の映画)
4.0
トランスジェンダー映画祭で鑑賞。
昨今よく議論になっている「女性用トイレに男装した女性が入り、性暴力に及ぶ可能性がある」問題に関して、アメリカで行われた議論や当事者、当事者の家族、医学的な見地からなど様々な視点で「それは違う」を明示してくれるドキュメンタリー作品。

「(トランスジェンダーである)あの子に問題があるのではなく、話を聞かない自分にこそ問題がある」という言葉が強く心に残って、やっぱり情報がないこと、正しい教育がされていないことが根本の原因だと感じた。
女性、有色人種、障害者など、たくさんの差別を繰り返して、権利を奪い返してきた歴史と変わらないなと思った。

以前、女優の橋本愛さんがSNSで「女性トイレに男性の体で入ってくる人がいるかもしれないと思うと不安を感じる」と発言した時、同じように不安を感じている人たちからは支持があり、トランスジェンダー当事者や支援者たちは怒ったり落胆しているようだった。
「それは結局、性犯罪者への不安や恐怖であってトランスジェンダーは関係ない」という当事者や支援者の意見は正しいし理解できる。
けど、私が見た限り多くの人が「学んでから言え」と激怒して対話をシャットアウトしているように感じた。
もちろん、何度も何度も同じような風評被害に遭ってきた人たちの苦しみを軽んじるわけではないけど、やっぱり情報や学びを得るにはまず対話から始まるんじゃないかと思う。

長くトランスジェンダーの支援を行っている当事者の「自分の魂が真っ黒になってしまったら、そんな風に生きていくのは嫌だから、(知らずに反トランスジェンダー法に賛同している人たちについて)善良であると思っている」という言葉が深く刺さった。
社会が変わることを望んで自殺を選ぶ子供がこれ以上増えないように、様々な立場にいる人たちが相手を善良だと信じて対話を進めていかないといけないし、まずは自分からだと感じた。
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