やた

美と殺戮のすべてのやたのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
4.0
オピオイド危機についても、ナン・ゴールディンという人についても知らなかった自分が恥ずかしい。
こんな大変な事件が起きていたということをまったく知らずに去年、グッゲンハイムとMETに行ってたな…。

偏見、差別、生きづらさが身近にある日常の中で、写真という表現を手に入れ、それをもって仲間との絆を深めたり、社会へ問題提起をしてきた彼女の強さに、自分はこんな風に戦えないだろうなと思う。

パレスチナで起きている虐殺、同性婚を認めない国、そしてそれを問題視せずに同性愛をエンタメとして消費する作品や人、トランスジェンダーへの差別、ギャンブル依存について間違った情報を流すメディア、女性への加害の刑罰が軽すぎる現状、などなど毎日SNSで流れてくる息苦しい情報に怒ることも悲しむことも疲れて、「もうどうでもいいか、なるようにしかならんし…」とあきらめてしまった方が楽になるような気がしていた。

でも政治が弱者の声に耳を傾けようとしないなかで、抗議活動を重ねて地道に賛同者を増やし、美術館を動かしたように、苦しめられることを受け入れない姿勢を続けることが大事だと勇気をもらえたような気持ちになった。

だけど人が大きなものに立ち向かう原動力が、大切な人の死だというのは本当に悲しいなぁ。
やた

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