旅するランナー

靴ひものロンドの旅するランナーのレビュー・感想・評価

靴ひものロンド(2020年製作の映画)
4.1
【噴射家族】

家族間の相性の悪さってのはあるのでしょう。
長年に渡って根に持つことの怖さを思い知る、大人なイタリア家族映画。
わずかな食い違い・すれ違い・行き違いが溜まり溜まって、一挙に噴射・噴火・噴出。

1980年初頭と30年後のナポリとローマを行き来する人物たちが、登場してしばらくは誰が誰だか分からないのも、原作の雰囲気を残すために、敢えて取られた手法らしい。
この配役が、より気持ち悪いミステリアスさを醸し出してます。
結果を先に見せて、原因を後から示す、見事な演出です。

原題「Lacci」の意味は、細ひも、罠、策略、きずな、関係。
確かに、靴ひもの結び方について親子で話し合うシーンがあるけど、そこから派生する意味はより奥深い。

音楽の使われ方も素晴らしい。
フォークダンスで使われる「レットキス」は、フィンランド語で"列になって繋がって踊る"っていう意味で、悲劇的な滑稽さを描く今作のテーマ曲として最適です。
それと、バッハの「バディネリ」「ゴルトベルク変奏曲」が場面にマッチして、より不気味さを表現してます。
全体を通して、ダニエーレ・ルケッティ監督の才覚がジェット噴射されてます。