Jun潤

ドライブ・マイ・カーのJun潤のレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.8
2021.09.01

村上春樹原作、西島秀俊主演。

舞台俳優であり演出家の家福が、演劇祭で訪れた広島で出会った専属ドライバー・みさきとの邂逅と彼らが自身の過去と向き合う様が描かれる。

長い尺の中で家福の過去や演劇が作られていく様、妻を亡くした際に求めなかった隠された事実を知る過程が、本当にすごく丁寧に描かれていました。
村上春樹の小説は一冊しか読んだことがありませんが、問題のないように見える主人公が抱える問題と向き合い方、向き合った結果どこに向かおうとするのか、が描かれている印象で、今作ではその雰囲気がとても現実的に描写されていたと思います。

今作で印象的だった描写は、日本語韓国語北京語そして手話で紡がれる演劇、そこにある言語の壁とそれすら超える舞台の世界。
そして、車中を舞台にした人間ドラマ、こちらに関しては車中の会話場面にみさきを登場させずに聞き役として徹していたことを描写していたり、終始走行音が鳴っていたからこそ、訪れる無音の走行場面に神秘的な雰囲気すら感じさせていたことが印象的でした。
また、ところどころに画面構成が印象に残る場面があり、背を向けている人物の表情を鏡に反射させたり、会話を聞いている人を画面の端に登場させ続けていたりと、小気味の良い会話劇が繰り広げられていたわけではないのに、新たな会話劇の形が見えた気がしました。

演技については、これまでの作品や現在放送中の朝ドラにて安定した人物の演技が象徴的な西島秀俊が魅せる不安定さ、もはや好青年の役の方が似合わなくなっていそうな岡田将生などありましたが、やはり今作は三浦透子ですかね。
透明感や清涼感とはかけ離れたキャラクターながら、その演技は確実に輝いていたと思います。
また、劇中の演劇にキャスティングされていた方々も、演劇部分以外の細かいところで生き生きとしたキャラクターを映し出していたと思います。

「仕方ないもの。生きていかなきゃいけないの。」

(3時間近く2列目の席で見上げていたので頭が痛くなりました…。)
Jun潤

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