Shin

ドライブ・マイ・カーのShinのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.6
『寝ても覚めても』の濱口監督が、村上春樹の短編小説を映画化し、カンヌで脚本賞を受賞したとあらば、観ない訳にはいかない。

あらすじを読むと、演出家で役者の家福(西島秀俊)が主人公となっているが、ドライバーのみさき(三浦透子)ももうひとりの主人公と考えられる。

家族のことで暗い過去を持つ二人が出会い、心を開いていくことで未来に希望を見出だしていくからだ。

家福の妻で脚本家の音(霧島れいか)は、存在のないまるで幽霊のよう。名前のとおりカセットテープから聞こえてくる声の方がむしろ実体を感じられる。

また、家福の舞台での演出と同じように、家福とみさきは感情をあまり表に出すことはないが。車(サーブ)の中で流れるカセットテープ(戯曲『ワーニャ伯父さん』の台詞)を通じて家福の心情が語られる。

そして劇中で異なる言語の役者が言葉に重きを置かずコミュニケーションを交わしているのと同様に、みさきも思いの詰まった運転によって家福の心を捉えていく。

欲を言えば、みさきの過去はセリフだけでなく、回想シーンが入っても良かったのではないか。

終盤ある事件をきっかけに、家福とみさきが互いの葛藤を乗り越え、擬似家族のように見える構図は面白く、この脚本の素晴らしさがよく表れている。

ラストのシーンの解釈は観る者に委ねられており、読み解くのが難しいが。このコロナ禍において、困難な状況を強いられている人々に希望を与えてくれるものだと考えたい。



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