おぺちょぺ

ドライブ・マイ・カーのおぺちょぺのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.5
鑑賞中に『はちどり』を思い出したんだけど、まさにキム・ボラが製作支援にクレジットされていた。
3時間という尺を感じない。序盤、中盤、終盤と無駄がない。素晴らしい。

演劇を描く映画としての完成度ね!稽古を描く映画にハズレなしと私は思っているんだが、本作なんてオーディションから始まる。とにかく役者たちに感情を抜いて本読みを繰り返させる。その意図までご丁寧に語ってくれる。演劇好きの映画好きとして、これほどうれしいことはない!
『バードマン』もそうだったけど、舞台上のまぶしい照明、朧げに見える観客・・・つまり、「役者の目線」が幾度も出てくる。観客は本来舞台に立てないが、映画でなら可能だ。演劇に対しての映画の優位性を示しつつ、前者の圧倒的強みである「空間性」までも描いてくれている。

文化財団の女性職員さんのあの感じ、たまらないよな。後半、彼女の感情が行動(車のドア、バーンっ!)のみで示されるんだけど、本作で一番素直な感情表現をしているのが彼女というのが可笑しかった。

岡田将生のイメージがガラッと変わった。感情の出どころがわからない芝居をする役者が大好きなんだ。一番直情的に思われた彼が、最も複雑な人間であった。