紫亭京太郎

ドライブ・マイ・カーの紫亭京太郎のレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.1
夫婦友人も含めて人間関係の“間”の取り方は個人の性質によって、また人との別れに伴う喪失感への対処の仕方はその経験値と“種類”によって、それぞれ個人差は大きいよなぁ…なんてことをしみじみと考えさせられる。
同じく妻を突然亡くした夫を描く、西川美和監督の「永い言い訳」は、“飲み込む”ことができない男を描き、同性である濱口監督は“飲み込む”男を描く。どちらも、現実に向き合わず、見て見ぬふりしてきた喪失感に向き合うことで立ち上がる男を描いてはいるのだが、プロセスが異なるところに、男が“飲み込む”ことに対する見え方・解釈が違って面白い。
それはやはり、異性か同性かの違いということなんだろう。妻を亡くした男を、静かに受け止めている過酷な過去を持つ女性ドライバーの存在が、男に現実と向き合うチカラを与えることになるのもまた、“男目線”な母性への畏怖を描くようで面白い♪
丹念に、丁寧に作り込まれた、落ち着いた物語の流れが心地よい、ヒューマン・ドラマの佳作!
濱口監督は、映画を見る一人一人が、自分の体験と照らし合わせて、様々に思いを巡らせることの楽しさを味わえる余韻を創り出す天才ではないだろうか。
紫亭京太郎

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