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ドライブ・マイ・カーのRAMRIDERのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.5
監督の演出も役者の皆さんの演技も一分の隙もなく、画面の外側に広がる物語の豊かさや奥行きもある、全てとはいわないけどきっと物語は読み取れているはず、なのにどうしても村上春樹の小説の映像化と自分の好みの相性が悪いような気がしてしまう。

これは本当に凡庸な感想だと自分でもおもうんだけど村上春樹の小説に出てくる登場人物はその行動もセリフも活字で読んだときにその句読点まで含めて気持ちが良いように最適化されていて、それが映像や音声として立ち上がったときの居心地の悪さがどうしても抜けない。「春樹ワールド」という暖簾を一枚くぐってから観ないと、という気分になる。

例えば「わかるんです。嘘をつく人の中で育ったので」みたいなセリフも小説の中で出てくると「きっといろんな過去を抱えてそういう嗅覚のある人間になったんだな」と思えるんだけど生身のひとの口から声で発されると「その経験をもとに彼は嘘は言ってないなんて言い切っていいの?」と思っちゃう。

かといって観てる途中で飽きたとかってことはまったくなく、最後まで画面の隅々まで観察しながら集中して観れたのは監督の手腕だと思う。でもなんだか引き算や奥行きで構築されているはずの世界が「ただの思わせぶり」に感じる瞬間がどうしてもあって、はーん!というかんじだ。でも、おもしろかったです。おれは何が言いたいんだろう、と考えちゃうけど作品の良し悪しではなくfilmarksを見てる人に自分という人間を知ってほしいだけなんでしょう。

いずれにせよ濱口監督が天才なのは間違いないなーと思った。
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