Nana

ドライブ・マイ・カーのNanaのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

濱口監督作品は偶然と想像に続いて2作目。素晴らしく良かった。

妻が不特定多数の男性と関係を持っているのを知りながら、妻を失うのが怖くて言い出せない夫。夫を深く愛していながら、亡くなった娘を殺したのは自分ではないかという拭いきれない罪悪感を話せずに抱え込む妻。
果たしてこれは愛なのかと疑ってしまうけれど、娘を失うという耐え難い苦しみを共有し支え合わないと生きていけない独特な関係だから成り立っていたのかもしれない。
娘の命日を弔うシーン。夫は身じろぎせず前を見据えているけれど、妻は動揺を隠せずに視線を落とす。思い返すと、気持ちのずれがここで表現されていたんだな、と気づく。

手話で語られる戯曲のラスト。遺されたものは生きていかないといけない。他人のために働きましょう。そしてその時が来たら大人しくいきましょう。そしてはじめて安心できる。辛かった、苦しんだと伝えましょう…本当に美しくて、こんなに言葉が胸に沁み入る経験は初めてで。劇中で流れる喝采に、私も心の中から拍手を送りました。

岡田将生が車中で語りかけてくるシーンは、表情、紡ぎ出される言葉、全てに引き込まれた。女性と関係を持つことでしか相手と分かり合えない。一見軽い人間かと思いきや、音が心を開いて物語を語ったように、深くない関係だからこそ真実が語れることもある。他人の心を見るにはまず自分の心と向き合い折り合いをつけること。家福へ核心をついた言葉を投げかける。

まだまだ感じたことはあるけど、うまく言語化できない…
もう一度観て、じっくり台詞を噛み締めたい。魂が救われるような、素晴らしい作品でした。
Nana

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