滝井椎野

ドライブ・マイ・カーの滝井椎野のレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.7
とても文学的な作品で、映画を観るというよりは文章を読んでいるといった方が適切かもしれない。
ストーリーやキャラクター等、どんどんと実態を得ていくような作り方が面白かった。
いずれも役割を決められた記号的な登場人物たちに、話が進んでいくにつれて属性が付与される。はじめ、何となく空虚で血肉が通っていないようにみえる登場人物たちだが、面白いことにどんどん人間味が感じられるようになっていく。
登場人物に限らず、タイトルにもなっている車とその車中、運転するという行為等色々なことにそれぞれ意味が付与されており、全てが組み合わさることで次の展開へと繋がる。
これらは主人公家福の舞台の作り方と同じで、初めは何もない、ただ文章をなぞるだけの行為に、「何かが起こる」ことで命が宿り、物語として完成する。
物語の素をテクストに、テクストを物語へと昇華させていくような流れが見事だった。

あくまで個人的にではあるが、やはり上映時間の壁というものがあり、それが魅力ではあるのだが、作中の言葉や濡れ場をもう少し減らしても良いのではないだろうか……等と愚考してしまった。
滝井椎野

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