示唆に富んだ無数の言葉たちが寄せては返し、また押し寄せては引いていく、波間のような時間だった。
だから言葉について考えていた。
刃にもなり、希望にもなる言葉。
けれどもそんな作品の中で、言葉にならないものに宿る真実性のようなものについてもまた目撃し、思いめぐらせた。
どちらにせよ、他者とほんとうに繋がるためには、耳を傾け汲みとることを怠らず、自分自身を深く見つめ差し出すことをいつだって躊躇ってはならないと、心に刻む。
パク・ユリム演じるイ・ユナ、またそのユナが演じるソーニャがまさにそれを体現する人で、とても胸を打たれた。この映画の灯火だと思った。
自分の言葉を持つ人は凛として美しい。
濱口監督と村上春樹の相性の良さといったらないなあ。
今すぐもう一度観たい。そして時が経ったらまた観たくなるのかも。
本当にすばらしい映画でした。
