SakaiMasayo

偶然と想像のSakaiMasayoのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.5
小説でも読んでるみたいな、あんまり観たことのないような映画だった、不思議。
人生ってサスペンス。

ごくありふれた、でもその個人にとってはひとつっきりの自分だけの日常風景を生きる普通の人たち。そこにゾクっとするような偶然がもたらす景色のグラデーション。
人の心のほんとうの暗がりにも光にも、ざらりと触れた感触があった。

そんなまさかな偶然って、でもなんか、あるよね。
ものすごい最大瞬間風速の突風、みたいな。
そういう偶然の積み重ねを私たちは生きていて、それって時に自分の力ではどうしようもない。
ままならないことばかり。
けれども、だからこそ、自分の意志を腹にグッと据えて立つひとは、強い。
その意志と言葉と行動によって、それがまた他者と作用・反作用するこの世界で、曲が転調するように景色はくるくる変わっていく。

無駄のない削ぎ落とされた造形美を鑑賞するのにも似た…
観ている間もそのあとも、ちょっとした浮遊感があって、それから深いところに降りてきて、印象的な作品でした。
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