Hoshi

ドライブ・マイ・カーのHoshiのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

村上春樹の小説は楽しめたことがなくて映画も観たことなかったし海外で評価されるものと国内の人が応援できるかは別物だよなあといつも感じます。

でもほぼ3時間あると知らずに見始めて、え、想像以上に長い、、と思ったけどそれは話がだるくて長く感じるのとは違って、悪くない長さでした。
物語が動き出す瞬間に大きな場所の移動があったり、村上春樹だから難解なのではと警戒したわりに、わかりやすかったと思う。どのシーンも大事なんだろうけど、あ、ここは勝負所のシーンだってのがちゃんとわかる。そして、環境音が一切ない青白い雪の世界はよかった。
お話の中でさらに演劇の準備が進行していく、この入れ子?のような複雑さが楽しい。こんな多言語演劇観たい。メガネ忘れたらスクリーン見えなくて終わりそう。
最後の手話もとても素敵だった。そしたらわたしたち、ゆっくり休もうね。

何かと性が生々しく出てくるのはストーリー上仕方ないにしても、どうしても性以外のもので設定できないかと考えてしまうのは、まだわたしが無意識に性を秘すべきものだと感じているからでしょうか。
おくりびとで初仕事した後に主人公が妻に生きている肉の温かみを求めたように、音さんが求めたものは性とかその先の神秘的な感覚の中にしかなかったのかもしれないんだけど、どうしても集中が削がれてしまう。頭ではわかっていても、果たして映像で本当にそこまでいるのかなって思っちゃう。

三浦さんの死んだ顔(褒めている)もその中でわずかに動く感情もすごく魅力があって素敵でした。岡田さんの役どころも興味深い。
男たちがもつピースから女性が浮かび上がるところがおしゃれで、でもヤマガの話はえげつなくて。どうして焼却場とか思いつくのか、愛し合っていながら保身と思いやりの中で本音が言えなくなった夫婦の、妻が死んだ男の話(要約するとここまで陳腐になってしまうような)で、どうしてここまで独自の世界と深さが生まれるのか、村上春樹の日々の生活が気になって仕方なかった。

これまでの村上作品に対する敗戦経験から、わたしには小説はきっと楽しめないんだろうけど、映像化させるのはほんとにすごいことなんだろうなとしみじみ感じながら、ひとつひとつの画面の切り取りとか、言葉の選び方とか、間とか、そういうところが心地よくて見続けていました。音楽も良かったし。

ここで、観ていなかったノルウェーの森に戻ってみるか、悩むところです。。
Hoshi

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