バニラエクストラクト

誰も眠らない森のバニラエクストラクトのレビュー・感想・評価

誰も眠らない森(2020年製作の映画)
1.5
スマホの普及で昔風のホラー映画は作りづらくなった(いつでも外部と連絡がとれてしまうので)という話を聞いたことがあるが、本作はその対策として「ネット中毒者のためのリハビリキャンプなので下界と隔絶した山奥だし、最初にスマホは没収するので使えません」という設定を持ってきており、おかげでオールドスクールな「サマーキャンプに訪れた若者グループが殺人鬼に理不尽に襲われる」という王道を現代で再現することに成功している。
グループの構成メンバーも、小太りオタク、童貞、ゲイ、おっぱいぽろり担当女子、主人公(女子)というかんじで、まあまあ王道ではある。

現代風だなーと感じるのは、王道であれば派手に死ぬために存在するキャラ(セックスしてしまった童貞や、おっぱいぽろり担当女子など)にそれなりに人間味を持たせ、客に感情移入させるエピソードを設けている点。狙いとしては「実はこの子いい子だし死なないのかも?」と一瞬思わせといて殺しますwwwwというような意表を突く展開にしたかったのだろうなと思う。
しかしどのエピソードも描写が中途半端なため、結局のところ何をしたかったのか分からない印象を受ける(ありていに言うとスピード感が削がれて客がしらける)。
ただ、ゲイキャラのエピソードだけは妙に濃い目に練り込まれており、個人的には「ジーパーズクリーパーズ」を何となく思い出してしまった。

本作はこの手のサマーキャンプ殺人鬼ものにしてはかなり理詰めの設定(スマホが無い理由や殺人鬼兄弟がこうなってしまった理由など)を盛って挑んできているという気はするが、その割にはいろいろ中途半端で残念。理屈なんか気にせず爽快さだけを求めてフルスイングするか、もっと理詰めでツッコミどころを減らすかどっちかに振り切れれば良かったのにと思う。作り手があまりホラーという題材が好きではないのかもしれないとも感じた。
殺人自体はかなり派手にやってくれるので、お菓子とジュースを準備して友達呼んで、何も考えず皆で気持ちよくギャーギャー言いながら観るにはいいかもしれない。ただ唐突なSF展開があるので、純粋に殺人鬼ものを求めて観るとがっかりするかも…