ノラネコの呑んで観るシネマ

岬のマヨイガのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

岬のマヨイガ(2021年製作の映画)
4.1
震災直後の東北で、お婆ちゃんと二人の少女が血の繋がらない家族となり、訪ねてくる人をもてなす家の妖怪、マヨイガで生活を再生する。
心に傷を抱えた少女が主人公で、舞台は生まれ育った所を遠く離れた田舎街、土地伝統の妖怪たちが絡む構図は、「ももへの手紙」を思わせる。
脚本が吉田玲子なだけあって、登場人物の心象描写はとてもきめ細かい。
芦田愛菜演じるユイと、年少のひよりは別種の傷を負っているが、それぞれの再生のプロセスも綿密に描かれている。
お婆ちゃんの語る昔噺のテリングもユニークで、東北の豊かな精神文化へのリスペクトも感じられる。
物語の前半はほぼ日常の再建に費やされ、妖怪たちが本格的に絡んでくるのは後半のみだが、前半の伏線が効果的に効いている。
クライマックスは、ベクトルがアクション系ではないのでアニメーション映画としては地味なれど、震災の爪痕を少女たちの傷とシンクロさせ、描きたいテーマはキチンと伝わってくる。
派手さはないが、丁寧に作られた良作。
やはり東北を舞台としていた「漁港の肉子ちゃん」と本作で、大竹しのぶの振り幅が凄い。
さすがだ。