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あの夜、マイアミでのSPNminacoのレビュー・感想・評価

あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)
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チャンピオン、スター、カリスマ、ヒーローが集まった一夜のパーティ。そこで何があったのか。事実に少しのファンタジーを交えて「再現」する、歴史の知られざるドラマ。
時代の象徴を一室に集め会話劇に凝縮するのは、意図的にとても演劇的だ(やはり舞台劇が元だった)。映画でも、マリリンとアインシュタインの邂逅や、エルヴィスとニクソンの会談があった。密室だからこそあり得たかもしれない出来事を想像で自由に膨らませ、フィクションが現実を照射する。強烈なキャラクターのぶつかり合いがスリリングな緊張感と化学反応をもたらす。
立場や信仰、プライオリティが異なる4人の会話をリードするのは、マルコムXだ。護衛を付け、カメラを持ち歩き、批判や議論を吹っかけるのは彼が死を意識してるから。そして黒人の成功者である3人と時に対立し、葛藤する。カシアス・クレイの拳とパフォーマンスか、サム・クックの音楽か、ジム・ブラウンの計画か、マルコムの深い信仰と信念か…会話はそれぞれが考える“ブラック・パワー”を浮き彫りにしていく。また、黒人だけの部屋を出入りして内と外を行き来するカシアスとサム、外を警戒し続けるマルコム、動かないジム。彼らの立ち位置をさりげなく表している。アイスクリームはバニラしかなく、それを食べるのはカシアスとジムというのも意味深(食べなかった2人はその後すぐ亡くなってしまう)。
四角いリングから、モーテルに乗りつけた車の4つのドアが開く俯瞰ショットも面白い。4つの点が結ぶ4角形。部屋という別のリングで四つ巴の演技合戦。そんな撮影や演出、それぞれの未来やアメリカの現在を暗示するような脚本で、監督レジーナ・キングはとてもスタイリッシュな映画にしていた。もちろんキャストは4人とも的確に似せてあり目が離せない演技。特にレスリー・オドムJr.自身の歌声すげえ!おかげで“A Change Is Gonna Come”と“Blowin' in the Wind”の関係を初めて知ったよ。
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