kmtn

映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021のkmtnのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

新ドラえもんのリメイク劇場版は、旧作の展開はそのままで、ラスト付近のボスとのバトル部分が変わっているパターンが多い印象でしたが、
今作はまるっと中盤から後半あたりの展開が原作と異なっていて、それが面白ポイントだった。


具体的にいうと、中盤にて、原作ではドラコルルにパピが捕まり、
そこに現れたロコロコとドラえもんたちが彼を助けに向かうという展開だったのですが、
本作ではドラコルルから見事パピたちを助け出すという展開に変わっている。


旧作ではドラコルルに捕まって以降、しばらく不在となってしまうパピですが、
本作では割と終盤までのび太達と行動を共にするので登場シーンが激増。
また最終的に再び自ら敵陣に乗り込むなど、よりヒロイックに描かれている。


中盤からの脚本の変更点もありつつ、大きな違和感もなくラストへ着地させたのは中々すごいと思いました。


ただし、これは水田わさび版のドラえもんになってからずっとそうなので、監督のせいだとかは思っていないのですが、
演出がいちいち媚びた感じなのが未だに慣れないし、嫌なんですよねえ……。
泣かせようともしすぎだし。


逆に大山のぶ代版の頃のドラえもんは、
良くも悪くもなんだろうけど結構ドライなので、やはり30歳にもなると最近のドラえもんの演出のウェットさはちょっと肌に合わない(旧作も雲の王国をはじめ、後半に行くほどドライではなくなっていくけど)。
子ども向けだからと言われればそうなんだろうけど、個人的にはやはり今の演出スタイルは子供騙しだと思ってしまう。


旧作について語られる時、やはり忘れられないのが武田鉄矢「少年期」。
ドラ音楽の中でも屈指の人気を誇る曲で、本作のリメイクが発表された時も、「少年期は続投してほしい!」とネットでは結構言われていた。
最終的にそれは実現されなかったけれど、代わりにビリー・バンバンが新曲を提供とのことで、どういう風に使われるのか楽しみにしていた。
「少年期」は地下の秘密基地でレジスタンスの1人がギターで弾き語りをするという使われ方でしたが、今回それは踏襲されずまた別のシーン(でもタイミング的にはそこそこ近い)使用され、
案外それもノスタルジーで良い曲だなあと思いました。なんなら武田鉄矢っぽさを感じて、ジーンときた。


文句も多少書きましたが、旧作とほぼ同じみたいな作品ではなく、
話の展開を変更しているのはチャレンジングだし、それこそリメイクの意味のあるリメイクだと思いました。
旧作と比べれるのも面白い。


奇しくもロシアのウクライナ侵攻と公開が重なり、
戦争と独裁者の恐ろしさを期せずして物語る作品となってしまった。
最終的に、為政者をより良い方向へ向かわせるのは市民ひとりひとりの意見でしかない。
ギルモア将軍が最後に民衆に取り囲まれてへたり込むのは、ピリカ星には民主主義が生きているからだ。
そうでないならば、ミサイルでもぶち込んで暴れる民衆を皆殺しにすればいい。
これは藤子先生が描いた原作もそうであるが、ひとりひとりが声を上げることの大切さがちゃんと描かれていると思う。


最後にひとつ。
これは個人的な感想であるが、本作&旧作のラストの展開は、全てのドラえもん作品の中で最もカタルシスがあると思う。
是非未見の方はご覧頂きたい。
kmtn

kmtn