MasaichiYaguchi

星の王子ニューヨークへ行く2のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.5
エディ・マーフィの代表作の一つの続編がオリジナルキャストで33年振りに登場するとはまさか思わなかった。
前作で自分の心に従い、伝統を無視して愛するアメリカ女性と結婚した主人公のアキーム王子が父であり国王のジョフィ・ジャファの崩御に伴い、続編では遂にアフリカのザムンダの新たな国王になる。
人は面白いもので高い地位に就くと大切なものが増え、以前の“攻め”の姿勢から“守り”に入ってしまう。
続編では、子どもは女の子ばかりのアキーム国王は、王位継承は男子だけという古くからの国の規則に縛られて苦慮していたが、30年前のアメリカ滞在中に関わった女性との間に非嫡子がいることが分かり、その隠し子を巡る騒動が賑やかに展開する。
タイトルからも分かるように本作でも二つの舞台、アメリカのクィーンズとザムンダとを行き来して物語が繰り広げられるのだが、30年経って当時とは様変わりしているとはいえ、登場する人々は相変わらずで下ネタ、差別用語てんこ盛りで思わず吹き出してしまう。
ニューヨーク市内で最も東に位置しているクィーンズは、市内の5つの区のうちで一番面積が広く、世界で最も民族的多様性に富む都市地域である。
とはいえ本作を鑑賞した人は気付いていると思うが、映画の初めの方で白人が登場しているのを除くと、徹頭徹尾黒人がメインになっていて、劇中の楽曲にしろ、それに伴うダンスにしろ、黒人文化をルーツにするものばかりだ。
そして登場するアキーム国王の妻リサ役のシャーリー・ヘッドリーをはじめ、その娘ミカ役のキキ・レイン等、登場する女優たちの殆どが美人ばかりで正に“Black is Beautiful”になっている。
アキームが連れ帰った息子ラヴェルは帝王学とは無縁のクィーンズの貧困層で育っているので、ザムンダの王子としての素養が有る筈もなく、急拵えの王道教育が始まる。
この王道教育の中でアキーム自身の王子時代の有り様、伝統に囚われない考え方が蘇ってくる。
前作の世界観を壊すことなく、更にダイバーシティのように現代的にアップデートした本作は、緊急事態宣言で大多数の映画館が休業している状況下、エディ・マーフィや前作のファンをはじめとした映画ファンの鬱憤を笑いで吹き飛ばしているような気がする。