yukiko

戦火のランナーのyukikoのレビュー・感想・評価

戦火のランナー(2020年製作の映画)
3.9
私は、東京五輪にはもう嫌悪と拒絶しか感じなくなっているけれど、これは予告編だけ見て泣きそうになったので、とりあえず観た。

お涙頂戴の感動プロパガンダみたいな映画だったら嫌だな…と少し警戒していたけど、違った。
でも化粧全落ちするぐらい泣いた。

特にこの一年、いろいろ嫌なモノを見せられすぎて嫌になっていたオリンピックの「本来の意義」とは何かを思い出させてくれるドキュメンタリーだった。
観てよかった。

改めて、東京五輪は、今ここで強行することではないと思った。

この映画では、グオルさんの壮絶な人生から成功への道の美談やIOCの良い判断だけでなく、組織の腐敗にも少しだけ触れていた。
祖国の国民的英雄みたいになってからも「自分は無職だ」と冷静に苦悩するグオルさんは謙虚で誠実な人だと思った。

父母との別離〜再会までの道のりの壮絶さもすさまじいけど、再会の時、お母さんとお父さんの感情の発露が独特で、嗚咽しながらも度肝を抜かれた。
世界には自分の想像を超えたいろんな人が生きていると改めて感じた。

リオ五輪の開会式の映像も、泣いた。
本来なら、感動的なお祭のはずだったのに。
通常とは違う形でも、その精神を大切にする道はあったはずなのに、こんなに汚されてしまったのが悔しくて泣いた。

南スーダンだけでなく、世界には文字通り、国を背負って、命がけでオリンピックを目指す人がいるのは知っているけれど、だから強行するのではなく、命がけで来る選手たちを安心して嬉しい気持ちでお迎えできない今、中止にすることもオリンピック精神だと私は思う。
yukiko

yukiko