Kaji

ひかり探してのKajiのレビュー・感想・評価

ひかり探して(2020年製作の映画)
3.6
中盤まで結構短調に事件捜査で背景を辿るんですが、以降じっくりと「なぜこの人たちの/この動きがあるのか」が見えてくる。

そこまでじっくりみていた破片がつながっていくと沁みるものがありました。
立場的な優位性を使われて疎外され、孤独な生活に押し込められている女性たちが自分の傷口に膿が溜まって全然塞がっていないのに、ある種共鳴するように他者を助け見届けようとする、それは「埋め合わせ」のようで自己治癒のようで。
誰にも痛みを理解されないと知ってしまった時、心理的に塞ぎ込むしか防衛方法がない時、イライラする元気もない時の居た堪れなさがどんどん入ってくる映画でした。


声の演技が一級品のイジョンウンが演じた声を使わない/出ない演技の切実さが素晴らしかった。
持ち前のゴージャスさを一切封印したキムヘス様、いろんな質感の忍耐を表情で表すし、ラストの夕陽に包まれた中での微笑がほんとに素敵だった。
(ヘス様公務員役の時は地味さをきっちり出してくるのすごい)
「あの年私たちは」のMJ役だったノジョンイも熱演。
 まるで代わりに怒りを表してくれてるみたいだったキムソニョンおんにと、キャストの世代もキャリアも横断したアンサンブルも良かった。


最後に、この作品の脚本に脚本賞を授与した韓国映画界の密度に拍手。
Kaji

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