くりふ

警察と泥棒のくりふのレビュー・感想・評価

警察と泥棒(2020年製作の映画)
3.5
【豊かであるほど愚劣さ極まる】

Netflixにて。以前に一度さらっと見てしまい、さほど心に残らなかった。様々に凝らした表現法を、チャラく感じてしまったことが大きいようにおもう。

今回はもう少し、ゆっくり心で追ってみたら、受け取り方が違ってきました。

現地事情を知らなくとも、それなりに心を動かす作りですが、カタログのように溢れ、連打されるアニメ表現の多彩さは、真意はわかりませんが、やはりちゃんと狙ったようですね。

この表現が豊かであるほど、逆に虚しさが引き立ってきます。映画の中で扱われる人の行為がただ愚劣なもので、ビジュアルの“多様性”とは真逆だからね。

よく考えられた短編だと思います。楽しさと後ろめたさが、表裏一体に詰められている。

2020年作ですが、この年に起きた、アマード・アーベリー射殺事件が発端。白人親子がジョギング中の黒人青年を撃ち殺すが、親子は釈放されてしまった。

社会問題化し、事件に抗議する“スポークン・ワード”が広まったそうだが、本作はこれらの動きを源として生まれたらしい。…そう聞くとナルホド、この仕上がりには納得する。

映画って、こういう“活用”もできるんだよね。

この仕掛けがわかれば、タイトルの仕掛けも二重三重に響いてきます。日本からもどんどん、こういう事例が出てほしいもの。

<2023.8.7記>
くりふ

くりふ