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尼僧ヨアンナの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

尼僧ヨアンナ(1961年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

第14回カンヌ国際映画祭審査員特別賞。
イェジー・カヴァレロヴィチ監督作。

ポーランド北方の尼僧院を舞台に、悪魔に取り憑かれた尼僧ヨアンナの悪魔祓いに臨むスリン神父の姿を描いた作品。

「悪魔など存在しない。天使の堕落と人間の堕落があるのだ。」
ユダヤ教司祭の言葉が印象に残る。
色欲に狂うヨアンナは神への誓いを破った己の弱さが招いたことであり、悪魔はその象徴に過ぎない。スリン神父もヨアンナの魅惑に惑わされてしまうが、神父と言えどスリンもまた一人間であることに疑いはない。誰も悪魔と対峙などしていない。神の誓いのもとに行動や感情を律するべき自分自身との戦いだった。終盤、悪魔に取り憑かれたスリン神父が村人を無残に殺してしまうが、これはある意味、神のもとへの復帰が難しくなった自分自身への救済だ。人を殺し完膚無きまでに堕ちてしまえば、悪魔としての自己に徹することができる。神父という束縛とその要求に応えられないことによる苦悩を振り切るために、悪魔ではなく自分自身が下した決断だった。
具現化された悪魔の描写が恐ろしい。ヨアンナが触れた壁に巨大な血の手形がべったり付いたり、ハスキーな悪魔ボイスで脅してくる様子は悪魔の存在を確かに感じさせるほどだった。
ヨアンナに扮したルチーナ・ヴィニエツカの色気は悪魔的で美しく、モノクロの映像に修道服の白が良く映えている。
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