役人者

時の面影の役人者のレビュー・感想・評価

時の面影(2021年製作の映画)
3.5
ときの流れと命の終わりに人間は抗えない。その絶対的な摂理をなんとか飲み下す為に、短い時間で失われていく命も、果て無いときの流れを構成する一部である証が必要になるのかもしれない。富や名声だったり愛する人だったり、証の形は人それぞれ。過去を掘り起こして未来へ繋ぐ使命を負った発掘家とは、そんな命の性質を分かりやすく形にしたような仕事だなと思った。
草原のど真ん中にある発掘現場のロケーションや衣装の配色等が相まって、アースカラーの画面が悠々と続く。金持ちの道楽にも見えるような発掘行為が、喪失の連続だった主人公の人生や、第二次世界大戦の影が差し迫る社会的な背景とリンクして、それぞれに相通ずるテーマ性を緩やかに示唆する。命の儚さ、命の繋がり、先達から受け継ぐもの、未来へ残すもの。それらを無差別に破壊する戦争。現世代が後世に残す面影を、戦争が塗りつぶしませんように。
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