kazata

ライフ・ウィズ・ミュージックのkazataのレビュー・感想・評価

3.5
まさかのゴールデングローブ賞ノミネート!…からのラジー賞最多受賞(最低主演女優&助演女優&監督)というSia初監督作品をウォッチ!!
(何度も言いますが自分はSia大好き人間なんで、、、2019年の豪雨のフジロックでのライブは最高でした!!)

世界的に酷評されてる本作ですが……ちょっと過剰&不当なネガティブキャンペーンが目に余る気がする。
(「どんだけ酷い描き方しちゃったの?」とドキドキしながら鑑賞だったけど"この程度?"な拍子抜けレベルでした…あくまでも個人的な感想ですが)

まず、「自閉症のキャラクターを健常者が演じること」への批判について。

いやいや、ルーカス・ドン監督作『Girl/ガール』(トランスジェンダーorシスジェンダー問題…)の時にも言ったけど、大事なのは「マディー(ジーグラー)ちゃんレベルでダンス&芝居ができる当事者がどれだけいるの?」ってことよ。
(Siaの神曲「Chandelier」をマディーちゃんレベルで踊れる自閉症の役者が何人もいるんなら動画アップして欲しい!)
(マディーちゃんが演じることによって「自閉症の役者のポジションを奪っている」とは言えないっしょ…)
(ちょい譲ったとして、自閉症の役者によるモブシーンがあっても良かったかもだけど)

加えて、マディーちゃんは単なるSiaのダンサーを超えた「Siaの分身的な存在=(乱暴に言えば)身体をSiaに貸しているような関係」なんだから、そもそもSiaの作品の(しかも)"ミュージック"と名付けられたミューズ的なメインキャラクターは彼女以外ありえないわけで。
(百歩譲って「じゃあ自閉症というキャラ設定にしないでコミュ障の無口な少女ぐらいに留めておけばよかったのでは?」という批判なら理解できなくはない……そしたらストーリーはガラッと変えなきゃだけど)
(「ピュアに"音楽"を体現できるキャラ」として自閉症設定にすること…ってそんなにダメ?)
(自閉症の描写=症状or障がい度の程度問題はあるかもだけど…レオ様だって『ギルバート・グレイプ』で演じてたじゃん…それに感動したじゃん…)
(…ってか自閉症と言わずに「脳神経に重度の障がいを抱えていて顔面神経の麻痺症状もある子」ってしとけば良かったんじゃない?)
(本作に嫌悪感持つ人ってMr.ビーンとかもダメなのかな??)

次に、「身体拘束の描写」について。

「パニック状態になっている人を落ち着かせるために地面に押しつけて動けなくする」という描写が批判されているみたいだけども……この辺は最新の対処方法を知らないから、事前に専門家の監修を受けておけば良かったかもね。(とは言え、そこまで暴力的な拘束方法には見えなかったけど…)
(立ったまま抱きしめる…ぐらいでも効くんならその方が良かったかな)
(でも、強張った身体を横にして筋肉の緊張をほぐすと精神的にも落ち着く……っていうリラックス方法は実際にあるけど!どうせならケイト・ハドソン演じる姉のズーがヨガやってる設定もあったから、その辺の理論武装=説明シーンを描いても良かったかも)

とにかく、「本当に映画見て批判してます?」的な酷評も多いから、ラジー賞だからって日本で劇場公開しないなんてことが無いといいんだけども……未公開くさいな(悲)……と思ったら2022年公開決定!!
(せっかく作ったんだからIMAXでやってくれてもいいんだよ!観に行くから!!)

(IMAX公式チャンネルの予告編↓)
https://youtu.be/N0OX1M61pgs

さてさて、映画の中身について、
アル中でヤクの売人という前科者のダメダメな姉貴が、障がい児の妹の面倒を見ることになったら……的なシンプルな物語。

はい、普通に楽しかったし、感動して泣きました!
(Sia大好き人間な上に先行してサントラやらMVで楽曲を聴き込んだせいも多分にあり…)

"日常に溢れている生活音が音楽へと繋がっていく"感じも良き!だし、主要キャラクター(兼ダンサー)が"ザ・多様性の尊重"(社会的マイノリティ全員集合レベル)なのも同時代的だし、"音楽=想像力は無限大=フィクション世界への愛が爆発"なのもアガるし。
(「音楽は全ての人に開かれているから素晴らしいんだ!」というアーティストらしいメッセージ)
(ミュージックの空想=心的世界を映像化したミュージカルシーンは、リアル世界で抑圧された様々な感情をノーリミットで解放した世界観となっていてグッド!)
(ミュージックなりに大切な人の死を理解して受け入れるシーンがちゃんとあるのもナイス!)
(ドラマパートがMV風のミュージカルパートに引っ張られ気味な編集やカット割りなのが惜しいのと、クライマックスは"それまで閉じられていたミュージックの空想世界がリアル世界に寄ってきてこそ感動できる"シーンだったから絶対に屋外であるべき!!)


(以下、クライマックスシーンに触れます↓)

(とは言えSiaファン以外には感動が伝わらないかもだけど…)

Siaの作った"Music"という曲が劇中で3度流れるんですが、その3度目でマディーちゃんが歌った瞬間に涙が溢れ出ちゃいました!
……(アルプスの少女ハイジで言うところの)「クララが立った!」ってヤツ(笑)

なぜそんなに感動したかって、
Siaの(身体面での)分身だったマディーちゃんが、、、
ついに「Siaの歌を歌った=自らの声を手に入れた!」ってことだから。

つまり、このクライマックスシーンにはマディーちゃんの"Siaからの自立=卒業"って意味も込められているはず!!

(スピルバーグ監督版『ウエスト・サイド・ストーリー』でも役者マディーちゃんとしての活躍を期待しています!!)
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